となりの八朔の実は青い

となりの芝生が青くなくとも、そこに生る八朔の実というものは青く見えるはずさ。自分でも何言ってるかはわかんねえっす。

非実在的存在の存在確認性

皆の者、『ラジオ』は聞いたことがあるか?

 

ラジオカセットというものは身を潜め、現代ではその役目をスマートフォンが負うようになった。チャンネル合わせの手間が省け、様々な番組が手軽に配信され、さらには個人単位でまでラジオ配信ができるようになった。

人間がただしゃべっているだけで30分が消費される、とても恐ろしいコンテンツが、ラジオである。私は主に声優ラジオを好んで聴くが、埼玉県民にはおなじみのFm79.5『NACK5』、インターネットラジオステーション『音泉』、アニラジや声優ラジオの寄せ鍋的存在『A&G』など、様々なものに手を出し(或いは耳を出し)、多くの時間の隙間を埋めてきた。

 

 

そんなラジオには必ずと言っていいほどある、とあるコーナーが存在する。

 

 

 

『ふつうのおたより』である。

 

 

省略しふつおたなどと称されるこのコーナーは、ラジオパーソナリティとリスナーとをつなぐ、雑談的立ち位置のコーナーだ。

 

 

本来、ラジオとは自分とはかけ離れた場所にいる人間のトークを聴くものだ。舞台の上に立つ華々しい人間や、ゲームラジオではそのゲームの製作者、アニメラジオなら声優や、雑誌なら編集長が出てくることもある。(アニメージュの人、喋りがうまくてびっくりした)

 

 

それらは簡易に出会える存在ではなく、自分の主観上においてあまりに非実在的であり、非存在的である。もしかするとその番組すら自分の及び知らぬところで制作されており、自分という下等存在は認知することもできないのではないか、と錯覚するほどだ。

 

そんな下等存在が唯一番組に干渉できるのが、『お便り』という手段なのだ。コーナーへのお題提供や雑談の種、何でもない独りよがりな文章から直近のイベントの感想まで、その種は様々であり、ラジオを構成するうえで欠かせないものとなる。お便りを送るプロ、『ハガキ職人』(慣習でそう呼んでいるが、メール職人といってもいいのかもしれない)と呼ばれる存在までいるのだ。いくつかの番組を聴きかじっていると、一度は聞いたことのある名前が複数の番組で呼ばれていたりはしないだろうか。そういった存在は、とても繊細なメールタッチで、ラジオの進行を絶妙にサポートする大変上手な文章を書かれる。職人たちのラジオへの顔の広さ、筆の速さ、その文才には目を見張るものがある。

 

 

 

しかし、普段画面の中や、声でしか聴いたことのない人物の実在を、いったい誰が保証してくれるのだろう?送ったメールやはがきが、本当に届き、実在する目を通り、実在するパーソナリティが読み上げることなどあるのだろうか?存在するかもわからぬ存在に、便りを出すなどリスキーが過ぎるのだ。

 

そんなことを思いながら、私はとある番組に震える手でメールを打ったことがある。あとから見返すと無駄とムラのある文章で、非常に見苦しい、聞き苦しい文章だった。『パーソナリティさんの出してるシングル、買いました!』という主題に至るまでが、長ったらしくて仕方がなかった。さらには、メールの最後に括り付けた質問も、少しばかりメールの内容からは無理がある方向のものになってしまった。送信したときは感激と安堵で気づきもしなかったが、推敲とはとても重要な作業だったのだ。(この時、このメールはラジオを聴く30分で書き上げた。)

 

 

 

いつか読まれるだろうか、それはいつで、どのような反応がもらえるのだろう。期待もあったが、メールの出来から来る諦観もあった……

そんな水曜日のアルバイト明けであった。

 

 

読まれたのだ。(DJ Hassaku)

腰抜けるかと思った。

 

私が送った便りは、実在と非実在の境界線を踏み抜き、確かに実在の目を通り、実在のパーソナリティに音声として発してもらえたのである。

 

私は駐車場へと向かう帰り道に立ち尽くした。そのコーナーを聴き終えて、ようやく自分の中で整理整頓がついてから歩き始めた。

 

 

『自分が干渉できる』というのは、なかなか味わえるものではない。

自分が干渉するということは、干渉しなかった場合とは異なる結果が起こるというわけだ。自分があの時メールを送っていなければ、この番組の第260回のふつおたはまた異なる形相となり(そして私のメールに辛辣なニコ動コメントが付くこともなく)、自分にとっては聴くだけの存在となり、音声の先の人間の実在を検知できなかったことだろう。

 

 

非実在的な存在に対し、存在確認の信号を送ることができる、それが『お便り』なのだ。電子であれ紙媒体であれ、それは変わらない。

 

 

 

もしラジオを聴いていてまだ便りを出したことがないという人がいるのなら、ぜひとも、あなたのお気に入りの番組に突っ込んでいってほしい。ラジオとはパーソナリティとリスナーの繋がりが顕著に表れるコンテンツなのだ。恐れることなく、自分の持ち合わせる文章力で、勇敢に投稿してみてほしい。(恐ろしいまでにへたくそな文章を送り付けた私が言えたことではないのだが……)

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの握るその筆で、あなたの好きな番組を盛り上げてみないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ見ぬ電子世界の実在性音声媒体に思いを馳せて、またこんど!

おまけ

『Radiotalk』というアプリで『橘八朔の八朔果樹園』という番組をやってたりします。

最近更新できてないのですが、応援よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

MUSIC『夢見る力に』